20世紀後半から21世紀にかけてベス・チャトー(1923ー2018)が英国で最も知られた造園家であることに疑いの余地はないだろう。
チャトー夫人の夫アンドリューはエセックス州コルチェスターに約5エーカー(約6千坪)の果樹園を所有していたが、夫妻が移り住んだ
1960年には果樹園はすでに廃業し荒れ地となっていた。それもそのはず、エセックスでもこのあたりの年間降雨量は500ミリ前後、
冬は氷点下の日々も多く、夏の最高気温は摂氏30℃以上、なにをするにも条件が悪かった。土地は砂漠なみ、なのに湿地帯もある。
生涯の不作といっても言いすぎではないこの地で庭園造りをはじめたのは夫妻の強い意志と決断である。どんな土地にも
その土地に合う植物はある、人間が炎熱や極寒の地で生活しているように。ベス・チャトーの不断の努力は、植物が長年の
試練を克服し、生きる力を得るがごとく結実した、39年の歳月をかけて。
★生涯を庭づくりに捧げたベス・チャトーは2018年5月13日コルチェスターのElmstead Marketで逝去しました。94歳でした。
一代で「奇跡の庭」と呼ばれ、尊敬の念を抱かれる庭をつくりあげ、泥と茨になじみ、寸暇を惜しまず作業に励み、
ベスチャトーの名を国内外に広めたのちも自ら愛する園内の60年代の家に住みつづけ、生涯を全うした。自らの名を冠した庭は
きわめてすくなく、ベスチャトーの名は末永く讃えられるでしょう。姿はなくても庭があるかぎりベス・チャトーは生き続けるのです★