2023/02/10    昭和のキャラメル
 
 いつごろからキャラメルを食べ始めたのか、たぶん4歳か5歳でしょう。子どものころ冬場のおやつは干し柿か干しイモで、駄菓子やキャラメルを買いにいったのはお小遣いをもらうようになってからです。
小学生低学年で一番買ったのは明治サイコロキャラメル。サイコロに大粒のキャラメルが2個はいっており、食べ甲斐がありました。サイコロの色は赤白2種類、買うのは圧倒的に白で、気が向いたときだけ赤を買った。
 
 ズボンのポケットに大きなサイコロを忍ばせるとポケットがふくらむ。近所には駄菓子を食べる子どもが多く、サイコロを取り出すと注目されるので、路地のすみとか墓地で食べる。家より外のほうが食べ甲斐があったからだと思います。
 
 キャラメルはグリコ、カバヤなどのほかにタンクロー飴というのもありました。円い球の穴から頭、手足が出ているちょんまげ頭のタンクローがキャラクターになっている飴で、キャラメル箱はブリキの缶だったような記憶があります。戦前漫画の主人公タンクローがモデルだそうですが詳細はわかりません。グリコのキャラメルをおいしいと思ったことはなく、オマケのミニチュアおもちゃが楽しみで買いました。
 
 高級を感じたのは不二家のフランスキャラメル。箱のデザインは三色旗の真ん中に西洋の少女の顔。当時としてはいかにもフランスで、キャラメルの味が洗練されていた。
薄型のキャラメル箱は長辺と短辺の差が少なく、他メーカーのキャラメルと異なりおしゃれ。不二家にはペコちゃんのミルキーキャラメルもあったけれど、フランスキャラメルのほうがおいしく、森永(14粒)やグリコのキャラメルの値段はおおむね20円だったが、フランスキャラメルは30円。
 
 小学生高学年時、毎日のように買った雪印あずきヌガーは、ほかのキャラメルとちがって口のなかでねちゃねちゃせず、一般的なヌガーとも異なり、軽く歯をあてると二つに分かれる食感がなんともいえず、北海道の小豆かくありなんと思える甘味は上品なお汁粉のようで、30円だったと記憶しています。
 
 あのころ、まとめ買いという習慣はなかった。子どもが板垣退助の百円札を持って近場をうろつくことはなく、10円玉数個を握って菓子屋に駆け込む。
 
 自宅近くにあった映画館はテレビ時代の到来で売り払われ更地になり、そこに市場ができた。市場には「大入號(おおいりごう)」という大きな菓子屋があり、大入號のオヤジは市場の外で会ってもニコニコ顔で挨拶していました。小生はお得意さん。近所の噂話では、オヤジは映画館の元経営者の親類ということでした。
 
 伴侶とは菓子類、キャラメルの好みが同じで、以前その話になったときも上記のキャラメルが話題となり追懐にふけりました。伴侶はタンクロー飴なんて知らないそうです。2022年12月、彼女がひとりで阪急電車「京とれいん」に乗って京都へ。
梅田駅から高槻市駅までは殺風景な景色が延々とつづくので窓外を見ませんが、上牧(かんまき)から水無瀬、大山崎までの田園風景に目をやることはあります。富田(とんだ)駅を過ぎ高槻市駅へ向かう車窓の風景(進行方向左)は軒並み工場だらけ。その一角にバカでかい板チョコの看板。
 
 調べたら、幅約165メートル、高さ約27メートルもある明治の工場の看板。帰宅して「工場見学に行ってくる」と宣言。伴侶も小生も菓子メーカーの工場見学は小学生低学年の森永工場以来していない。
明治の工場(高槻市)は阪急電車を乗り換え、最寄り駅から4キロも離れ、駅からバスを利用するとしても所要時間はトータル2時間弱かかります。車なら早い。気は進まなかったけれど「一緒に行こう」と言ってしまいました。伴侶は大喜び。それが昨年12月。
 
 明治の大阪工場に電話で問い合わせたところ、12月、1月は見学をおこなっておらず、2月からの見学申込みは1月中旬からの受付け。年が明け、2月8日午後の見学を予約。自宅から約28キロの大阪工場は国道171号線沿いにあるのでわかりやすく、カーナビを頼りにせずとも道に迷わず1時間弱で行けました。
 
 工場の一部、「きのこの山」と「たけのこの里」を製造している現場を50分ほど、分厚いガラスで仕切られた通路をガイドの案内で見学。工場内の衛生管理は徹底。参加者15名のうち3分の1は就学前の子ども。小生が最年長。
板チョコの看板の面積は16500センチX2700センチ=4455万平方センチ。板チョコは14、8センチX6、7センチ=約99平方センチ。看板は板チョコ45万枚です。広告用プラスティック看板としては世界一の大きさ、ギネスに登録されております。
 
 サイコロキャラメルやフランスキャラメル、あずきヌガーを1年分買い占めたいと思った子ども時代。板チョコ看板の大きさのキャラメル数十万個あれば埋もれて奇声を上げていたかもしれません。近所にもいっぱい配れたでしょう。そんな夢を65年ほど前にみたような気もします。
 
  画像はびっくり箱か。形はサイコロキャラメル。60年以上前に買っていたサイコロキャラメルが懐かしいと粘り、ガイドの許可を得て撮影(ほんとうは撮影禁止)。見学スタート時間50分前に一番乗りで到着したのが幸いでした。
 


前のページ 目次 次のページ