2009年から2014年にかけて兵庫県佐用町の「西はりま天文台」(兵庫県立)へ10回くらい行った。春と秋だけ行っても見えない星座があり、季節によっても時間によっても変化する星空。宿泊者は夜の観望会(無料)に参加できる。参加しない人は宿泊のみも可(当時)。
西はりま天文台は6室ある家族ロッジに泊まるのだが、2階建てのロッジは2LDKで洋室(ベッド2台)と10帖の和室(布団3組)、ダイニング(テーブル&椅子5ヶ)キッチン。
電磁加熱器、電子レンジ、中小の皿が数セット、急須、ポット、グラス、湯飲みも揃い、バストイレ完備。ロッジの料金は1泊1室6600円(現在は7400円)、ほかに寝具シーツのクリーニング代がひとり300円(現在350円)。
現在、部屋指定は不可ということだが、当時は指定も可能で、電話予約のさい1F「金星」を指定した。家族ロッジのほかにグループ用ロッジがあって、28畳の部屋を6室所有。1人1泊1200円(2024)、中学生以下は600円。別途、シーツのクリーニング代が1枚350円。
グループ用ロッジは主に小学生の団体が利用し、その日は一般客の家族ロッジ予約はできず、観望会もお子さま専用。小生は「西はりま天文台」友の会に長年在籍していた。年会費2000円で特典(月刊誌の毎月郵送、グッズの10%割引など)もあった。
中国自動車道の宝怎Cンターから佐用インターまで約102キロ、1時間20分弱、天文台までの距離は6キロ、15分。抜群の見晴らしが望める大撫山(おおなでさん 標高435メートル)山頂にあり、夜、天文台裏の森から野生の鹿が出没、芝生の丘や車道を連隊になって歩く。
車のヘッドライトが鹿の目に当たり黄金色に光って反射。その距離20メートル前後。角が生え身体も大きい。オスだ。明るい2つの目を持つ巨体が自分たちを照らしたのだ、目の数(8)は勝っているがぎょっとして立ち止まり、鹿4頭は踵(きびす)を返して森へ帰っていった。
観望会の前、天文台の大教室でレッスンを受講する。スタッフはさまざまで、なゆた望遠鏡をつくった三菱電気から出向している人、県立大学の講師など。彼らは数年いてメーカーに帰るか、大学講師として地方へ赴任した。
三菱電機の社員だった人は容姿が長谷川博己によく似ており、天体や星の解説もわかりやすく、ソフトな感じだった。そのときどきでテーマが異なり、今月は土星、翌月は射手座というふうな。
天文台敷地内のレストランは夕食の出前もやっていたので、初めて観望会に参加したとき注文した。出前してきた若い男性はビビる大木。黒ぶちメガネ、容貌がそっくり。夕食の味はさっぱり。朝食もレストランで食べたがいただけない。
その後どうしたかというと出発前、宝恷s内のデパートの食料品売り場で幕の内弁当を買う。朝食はチェックアウト後、山を下り、国道373号線(智頭街道)を南に2キロほど行った喫茶店「ブリック」でモーニングを食べる。
トーストかワッフルを選択できて味もよく、淹れたてのブレンドコーヒーが秀逸。焙煎豆の販売もやっており、焙煎時間(秒数)を指定できる豆を何度も購入した。天文台に行かないときは送料無料(5000円以上)で配送してもらった。
観望会の翌日、佐用インターチェンジから1キロ南の佐用都比売(さよつひめ)神社に何度か詣でた。鳥居をくぐるまでの参道沿いの生垣に咲くピンクのサザンカがきれいだった。いつ行っても参拝客はおらず閑散としていた。神社は静かなほうがいい。お詣りした気分になる。
天文台レストランのスタッフかと思った男性は若手天文学者のひとりで、三菱電気の長谷川博己氏が講師をしていた時期、星を探すため望遠鏡の位置調整をしていた。長谷川氏が古巣へ異動すると彼が講師となって解説を担う。その後、彼も東北の大学講師として赴任した。
観望会に義母を連れて行った。前にも連れていったら、また行きたいと言い2度目の天体観測。義母は大教室のレッスンで勉強熱心な小学生のように何度もうなづきながら耳をかたむけていた。
ビビる氏が屋上に案内し、ステッキ状のサーチライトを特定の星めがけて当てると、光に照らされたかのごとく星は輝く。数名が小さく叫び、義母は息を飲んだ。
帰宅後、伴侶に「あれが欲しい。買いにいって」と言う。「バルコニー(義母の家)で星なんて見えない」と伴侶が言った。星に興味はなく、何十年も夜空を見上げなかった人だ。それに、はっきり見えるのは木星、金星くらいだろう。伴侶が追い打ちをかける。「近所でステッキを振り回したら通報される」。
義母は家族同伴でたのしめるからと観望会を行きつけの美容院女性経営者に勧め、自宅の手伝いに来るヘルパーにも勧めた。地の利はよくないが車なら1時間半で行ける、宿泊費もこうこうと。だれも行かなかったけどね。
観望会で北極星、土星の輪、金星(Venus)、北斗七星、オリオン座、琴座(Vega)、乙女座(Spica)、射手座、牡牛座、白鳥座(Deneb)、すばるなど数多くの星座を見た。天体望遠鏡でみて、屋上からも星座をながめる。空は満天の星、講師の説明はロマンに満ちていた。天の川は子どものころ感じた宇宙の大河だった。
「すばる」は星の集合で牡牛座の星団。日本では六個を肉視できて六連星(むつらぼし)、西洋では七つ見えるのでセブンシスターズ。視力のすぐれた人は20個くらい見えるらしい。「万葉集」や「枕草子」に既出。「星はすばる ひこぼし よばひ星 すこしおかし」の文言は「枕草子」第236段。
2010年11月、木星(Jupiter)の縞模様は風にゆれ、清々しく、流麗。長らく忘れていた神秘、摂理を呼びさましてくれた天文台。空虚を埋める見学ではない、天空の限りない広さと静謐を感じ、心満たされる。
子どものころ地球は宇宙の法則で刻々と自転し、公転することを知った。摂理ということばもわからないまま、地球が止まったらどうなるのだろうと不安になった。地球が回転しているのに海の水はなぜ落ちていかないのか不思議だった。空一面の星。美しいものを想い、残された日々を穏やかに過ごしたいと願わずにはいられない。
小学校で習った歌で忘れられない歌のひとつが「冬の星座」。「木枯しとだえて さゆる空より」、「ほのぼの明かりて 流るる銀河 オリオン舞い立ち スバルはさざめく」。下校の途中、あぜ道を歩きながら何度歌ったことか。何度歌っても清々しい気持ちになった。
西はりま天文台 円筒形の建物内に「なゆた望遠鏡」(口径2メートルは公開望遠鏡で世界一)を設置

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