旅に王道なし(2)
 
 私が足繁く香港に行っていた頃の話であるから、昭和56年〜平成3年(1981〜1991)あたりの事、昭和60年頃まではごく普通にYクラス(エコノミー)で大阪ー香港間を往復していた。昭和60年当時、中国旅行が静かなブームを巻きおこしつつあり、その頃健在であった母が万里の長城へ行きたいと言い出した。母は足が弱いので、長城を空から見させてあげたいと思った私は、中国旅行専門の代理店に、万里の長城をヘリコプターから眺める見積りを出させた事があった。ヘリ2機をチャーターするのである。
 
 
 代理店の営業部長と直に交渉したほうが何かと融通がきくので、しかるべき人を通じて紹介してもらい、その部長と具体的プランの相談の話の中で、私はあるヒントを得た。それは北京とも万里の長城とも関係がなく、フライトの発券に関するヒントであった。
 
 それまでは日本から香港やシンガポールへ行く場合、日本を発着地にしていたが、逆に海外を発着地にして航空券を購入するほうが、遙かに安いという事であった。そこで、その当時の為替レートを考慮に入れた時、どこで買うのがもっとも得か、結論はすぐ出た。香港で買うのが一番安かった。
 
 香港ー大阪ー香港の往復だと、F(ファースト)クラスで8万4千円、4200HKドル(当時1HKドルは約20円)、C(ビジネス)クラスで6万6千円、3300HKドル。これを日本を発着地にして、日本で発券・購入すると、Fは往復で38万円、Cは26万円であった。しかも、香港発券のFクラス8万4千円には、大阪ー東京ー大阪のスーパーシートでの往復までついていた(これは発券時にその旨言う必要がある)。
 
 つまりこういう事である。香港ー日本ー香港は、香港ー大阪ー東京ー大阪ー香港と発券が可能で、香港ー大阪ー香港や、香港ー東京ー香港の単純往復と同料金なのである。ただし、香港ー東京ー大阪ー東京ー香港というフライトクーポンは発券できない。東京は大阪の東にあるから、航空協定上そういうフライトクーポンは切れないのだ。もし切るとすれば、サイドトリップということになって、東京ー大阪の往復分を別途負担しなければならない。
 
 私は宝塚なので、順路通りにお得なフライトクーポンの恩恵にあずかったのである。香港ー日本のFクラス往復・8万4千円には、大阪ー東京のスーパーシート往復分も付加されている、その分の4万円を差し引けば、香港ー大阪のFクラス往復はわずかに4万4千円となる。JL、CXなどの正規価格は上記のとおり38万円であるから、33万6千円安く買ったということになる。
 
 私はバンコクやシンガポールへ行くときも、それ以来香港でフライトクーポンを購入した。普通運賃による航空券は、発券後1年間有効であるし、キャンセルした場合でも、わずか1OOHKドル(2千円)のリファウンド手数料を支払えば、使用していない部分の料金は払い戻してくれる。空港内に各航空会社が用意しているFクラス用や、Cクラス用のラウンジも使える。
 
 いったん買った航空券は、日にちや他社便への変更が効くし、フライトキャンセルがあっても、裏書きして他社便に搭乗できる。目的地に到着した時も、Fクラスのバッゲージが真っ先に出てきて、Cクラスがそれにつづく。エコノミークラスは最後。空港のターンテーブルでバッゲージを待つ時間は短いほうがいい。メリットはじつに多いのである。
 
 さて、私がエールフランスの香港支店で購入したフライトクーポンは以下のとおりである。
 
 香港ー大阪ー東京ー大阪ーパリーニースーパリーフランクフルト/チューリッヒーミラノー東京ー大阪ー香港。
 
 香港ー大阪ー東京ー大阪と、東京ー大阪ー香港は「Fクラス」、ほかのフライトは「Cクラス」で発券した。普通運賃ならそういう発券も可能である。上記の全行程の料金は29万8千円(HKドルで14900ドル)、そこから香港ー日本のFクラス分8万4千円を引くと、21万4千円となる。つまり、私は日本とヨーロッパ各都市周遊の普通運賃・ビジネスクラスを21万ほどで買ったという事になる。 
 
 
                     (未完)
 
  
更新日時:
2002/04/30

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