格安旅行の快楽(2)
 
 格安旅行とはいっても、ヨーロッパでは気候条件の悪い12月〜2月に旅をするのは避けたい。たしかにその時期に日本を発つ分には格安航空券も入手可能であるし、宿も客を確保したいから、大バーゲンセールでバナナの叩き売り状態となるのは疑いの余地もない。
 
 しかしながら、小雪舞う町をとぼとぼ歩くのは、わびしさだけがつのってくるし、雪に覆われてしまえば、町本来の美しさは別物となるだろう。雪景色が旅情をさそうという事も分からないわけではない、私は雪景色を愛しているから。雪は田舎を神秘の里にする一方で、都会の汚辱を隠すのである。
 
 雪国にしばらく暮らした経験のある身としては、雪解けの季節ともなると否が応でも見ざるをえない雪解け水の黒っぽい灰色を思い出すのだ。あれはお世辞にも美しいとはいえない。そして冬は日が短い。それは活動時間が極度に制限されることを意味する。
 
 恋人と冬の夜、あてどなく町歩きをしたいという奇特な方や、四旬節直前の約3日間行われる謝肉祭を見たいというならともかく、ヨーロッパの冬は寒い。毎年のようにクリスマス寒波もある。安いという理由だけで真冬に旅するのは悪い事ではないと思うが、私はご遠慮申し上げる。
 
 ヨーロッパを旅するなら、場所にもよるが、やはり気候の好い5〜6月、あるいは9〜10月ということになる。7〜8月は、欧州全体が夏の休暇に入ることもあって、観光地や避暑地は異常なまでに混雑する。私なんぞはこの年になっても人に酔うので、夏期の旅行は出来れば避けたい。
 
 格安旅行の醍醐味は、ベスト・シーズンに快適な旅をして、なおかつ素敵なB&Bに宿泊することにある。また、旅の疲れを癒すための温かいもてなし、心からくつろげる宿の存在は大きいように思う。
 
 B&Bは、ひとり5000円から7000円程度でバスルーム付きのものがよい。4000円ほどの格安のB&Bもあるにはあるが、風呂やシャワーが共有となってツヤ消しである。格安とはいえど旅は旅、運動部や諸所のクラブのシャワールームとは違う。格安旅行にもそれなりの快適さが伴わねばならないのである。
 
                       (未完)
 
 
更新日時:
2002/05/26

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