季節はまだ10月上旬というのに、秋は終わろうとしており、朽ちてゆくものの匂いが夕暮れの中に漂い、その匂いは春を思わせるがゆえにいっそうの哀感をさそう…。
この家に人は住んでいない、住んでいたらさぞ寂しいことだろう、日が暮れると人はおろか鳥や小動物さえ寄りつかなくなるのだから。
窓から家の中を覗くと、テーブルの上に資料が何種類か無造作に置かれていた。
私たち3人はしばらくは黙ったままであったが、突然とりとめのない話をはじめた。
そして誰ともなくうしろを振り返ると、朽ちはじめた雑草に春のような匂いが立ちのぼった。その情景は、殺伐としたグレン・コーに意外な美しさを添えていたのである。
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